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2020.7.6

企業がリモートワークを導入するメリット・デメリット、失敗しない3つのポイント

(画像=LStockStudio/Shutterstock.com)
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2020年、新型コロナウィルスの影響でリモートワークが広がりを見せています。東京商工リサーチが2020年4月23日~5月12日に実施した「第4回新型コロナウィルスに関するアンケート調査」によると、在宅勤務を実施した企業の割合は55.9%でした。4月に発表された前回調査より+30.6%と大幅な伸びを示しています。

コロナ以前から、働き方改革の流れの中で「リモートワーク」という言葉が注目されていました。リモートワークとは、文字通りの意味では「remote=遠隔」で「work=働く」ことです。一般的にはオフィスに出社することなく自分が働きやすい環境で働くことを指します。

ほぼ同じ意味合いの言葉に「テレワーク」があります。この言葉は古くからあり行政も採用している言葉です。「tele=離れたところ」で「work=働く」ことになりますが、総務省の定義によると「ICT(情報通信技術)を利用し、時間や場所を有効に活用できる柔軟な働き方」となります。

リモートワークにはどのようなメリットがあるのでしょうか。本稿では働き手側と企業側、それぞれの側面から見たメリットおよびデメリットを見ていきます。また導入している企業の事例も紹介します。
目次

1.導入企業のメリット 2.導入企業にとってのデメリット 3.働き手のメリット 4.働き手のデメリット 5.リモートワークを実施している企業4社の事例 6.リモートワークの運用を失敗しない3つのポイント 7.リモートワーク導入で活用できる助成金
8.まとめ

1.導入企業のメリット

(画像=jd-photodesign/stock.adobe.com)
リモートワークというと働き手のメリットに注目が集まりますが、導入する企業側にも以下のようなメリットがあります。

1-1.オフィス面積を縮小できるので、オフィス賃料や光熱費などの固定費を削減できる

事業経費で大きな部分を占めるのがオフィス賃料です。リモートワークを本格的に推進すればオフィス面積を縮小できるため、オフィス賃料や光熱費などの固定費を削減できます。
※自社ビル・自社オフィスの場合のメリットも追記いただく事ができないでしょうか?

トレーニングジムを展開するRIZAPグループは、2021年度中にグループ会社75社の本社社員を原則在宅勤務にする方針です。これにより本社オフィスの面積を半減し、コストの最適化を図るとしています。大企業によるリモートワークの本格的推進事例として業績への影響が注目されます。

1-2.社員に支払う通勤手当を削減できる

リモートワーク中心で出社する頻度が下がれば通勤手当も削減できます。1カ月の半分以上がリモートワークなら定期券を買う必要もないかもしれません。

厚生労働省が調査した「平成27年就労条件総合調査結果の概況」によると、従業員1,000人以上の大企業における1カ月の労働者1人あたりの平均通勤手当は1万3,063円です。仮にリモートワークの普及で交通費を40%削減できたとすると、従業員1,000人の場合、年間約6,270万円のコスト削減になります。

(従業員:1,000人×月額平均通勤手当:13,063円)×40%削減=月額削減費:5,225,200円
月額削減費:5,225,200円×12ヵ月=年間削減費:62,702,400円

1-3.多様な働き方を認めることで優秀な人材を確保できる

多様な働き方を認めることで、優秀な人材を確保できるメリットがあります。優秀な人材の確保は企業にとっても至上命題といえるでしょう。企業でも多様な働き方を積極的に認める方向にあります。

通信大手ソフトバンクでは、「Smart & Fun! ITでスマートに楽しく!」と題し、大胆な働き方改革を実施しています。在宅勤務の拡充のほか、「定時退社DAY」、「スーパーフレックスタイム制」、「自己成長支援金」などの施策を導入しています。中でも月1万円の「自己成長支援金」は、自己のスキルアップに役立てる資金として利用できるユニークな施策です。

2.導入企業にとってのデメリット

(画像=monster-ztudio/stock.adobe.com)
企業側のデメリットとしては、以下の2点が指摘されています。

2-1.コミュニケーション希薄化による生産性低下の懸念

1つ目のデメリットはコミュニケーションが希薄化することによる生産性の低下です。リモートワークでは社員間の会話は大幅に減少します。パソコンやスマホのチャット機能を使った会話では、実際にコミュニケーションすることから生まれる偶発的なアイデアなどは期待できません。やはりオフィスでお互いに切磋琢磨して働くほうが生産性は高まると考えられます。

その対策として、週に1回または月に1回全員出社日を設け、全体ミーティングを行うなどの「オフ日」を設定するのも有効でしょう。

2-2.情報漏えいなどのセキュリティの懸念

2つ目のデメリットは情報漏えいなどのセキュリティに対する懸念です。主な懸念材料は以下の通りです。

・パソコン、USBメモリなど機器の紛失
・屋外でのショルダーハッキング(覗き見)被害
・リモートでアクセスした際のIDやパスワードの漏えい

これらの被害を防ぐには、持ち出し機器にパスワードやコピー制御を付ける、個人のパソコンにコピーできないようにする、HDDやファイルを暗号化する、遠隔データ消去機能を付けるなどの対策があります。
また、リモートワークのセキュリティ対策として最近取り入れる企業が増えているのが「VPN環境」の構築です。VPNとは「Virtual Private Network」を略したもので、公衆回線を使って仮想のプライベートネットワークを構築する技術です。VPN装置を使うと、離れた場所にいてもデータや情報の共有が可能になります。VPNを通してやり取りするデータは暗号化などのセキュリティ対策を施しているため、情報漏えいのリスクが低下します。

導入方法は、会社にVPN装置を設置し、アクセスに使うコンピュータ、スマートデバイスなどにVPN接続可能なソフトウェアをインストールするだけです。「リモート接続」を利用すると、リモートワークや出張先からも会社のコンピュータにアクセスできるなど大きなメリットがあります。

3.働き手のメリット

(画像=undrey/stock.adobe.com)
働き手側から見たリモートワークのメリットとしては、以下の2点が挙げられます。

3-1.通勤時間の節約

1つ目の働き手側から見たメリットとしては、毎朝オフィスに出勤しなくても良いため、通勤時間を節約できることが一番大きいでしょう。ザイマックス総研が2019年6月4日に発表した「通勤ストレスがワーカーの満足度に与える影響」によると、首都圏在住のワーカーの平均通勤時間は49分でした。通勤時間が長い人ほどストレスが高く、逆に通勤ストレスが低い人ほど仕事満足度が高い傾向です。

また、新型コロナウイルス感染拡大リスクが低くなるほか、大型台風などの災害時も今までのように無理して出勤する必要がないため、安全面で大きなメリットになります。

3-2.育児と介護の両立

2つ目は育児や介護との両立ができるという点も大きなメリットといえるでしょう。育児に手間と時間がかかる両親にとっては、在宅で子どもの世話をしながら仕事ができる環境はありがたいものです。また親の介護や通院などでどうしても物理的時間が割かれるようなケースもリモートワークであればフレキシブルに対応できます。

場合によっては、社会問題化している「介護離職」という事態の減少も期待できるでしょう。通勤時間の節約や育児・介護との両立などによって精神的な自由が得られるようになることも大きなメリットです。より高いモチベーションで仕事に打ち込むためには、精神的な負担を減らすことは極めて重要といえます。

4.働き手のデメリット

(画像=goodluz/stock.adobe.com)
働き手側のデメリットとしては、以下の2点が指摘できるでしょう。

4-1.コミュニケーションの希薄化による孤独感

1つ目は日常的な同僚や上司とのコミュニケーションがなくなることによって、孤独感が生まれることが指摘されています。特に女性社員にとっては、休憩時間にお菓子を食べながら同僚と語り合うひと時がストレスの解消にもなっていたでしょう。リモートワークでは休憩時間も一人で過ごさなくてはなりません。

4-2.セルフマネジメントが必要になる

2つ目の指摘として、より重要なのは、リモートワーカーにはセルフマネジメント(自己管理)が必要になるということです。会社に出勤すればチームプレーで仕事ができますが、リモートワークの場合はそれを単独でやり遂げなければなりません。そこには物理的・心理的ハードルがあるのも事実です。

しかし考えてみれば、これからはオフィスで仲間と働いていてもセルフマネジメントが必要になる時代だといえます。リモートワークを経験することは、セルフマネジメント能力を向上させ、ビジネスパーソンとして成長する良い機会になるのではないでしょうか。

5.リモートワークを実施している企業4社の事例

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では、リモートワークを実施している企業の事例を紹介しましょう。中には10年前から実施している企業もあります。

5-1.日産自動車

日産自動車株式会社では2014年1月より製造工程を除く全従業員の在宅勤務の利用上限を月40時間としました。育児・介護両立者については、利用上限を所定労働時間の50%にまで引き上げています。

また在宅勤務者専用のサイトを立ち上げて情報共有をしたり、家族のための休暇である「ファミリーサポート休暇制度」を設定したりして、さまざまなライフイベントに合わせた働き方をサポートしています。

この制度の利用によって、通勤や移動のための時間が削減され、新たな時間の創出ができました。創出された時間は育児・介護に費やされたほか、「余暇の時間の創出」「地域コミュニティへの参加」などにも使われ、ワーカーの生活の質の向上につながったとのことです。

また、今回のコロナ禍では独自の感染予防ガイドラインを策定し、出社せざるを得ない業務以外は徹底した在宅勤務を行うと発表しています。

5-2.リクルートホールディングス

株式会社リクルートホールディングスでは2016年1月より、全社員を対象とした上限日数のないリモートワークを導入しました。特筆すべきは、このリモートワーク制度は正社員だけでなく会社間の同意および本人の希望があった派遣社員にも適用されることです。同社では、2015年6月から「原則週3日は会社に出社せずリモートワークを行う」という実証実験を行っていました。

実験に参加した社員のアンケートでは、「通勤に当てていた時間を勉強や家事などの時間へ有効活用できた」「大切なのは出勤することではなく価値を発揮することなのだという意識が強くなった」などのポジティブな意見が多かったため、全社員対象に拡大したといいます。

そして、リモートワークを成功させるためにこれまでの経験から学んだノウハウが3つあるとしています。

・近況など簡単な一言から会話を始める
・いつでもコミュニケーションできる工夫をこらす
・時間ではなく成果を評価する

5-3.サイボウズ

サイボウズ株式会社では10年前からリモートワークを実施しています。サイボウズが2010年に試験導入した際の申請手順は、勤務場所・勤務時間を前日までに申請→上長が承認→在宅勤務実施→終了後に勤務時間と業務内容を報告→上司が評価するという流れでした。

社員からは、終了後の業務報告をきちんとしないと、さぼっていたのではないかと思われるという点がストレスになるという声があがったといいます。そして、東日本大震災を機に試験導入していた在宅勤務制度が生かされる結果となりました。3月で決算時期だったのですが、本社に出社しない社員がいてもリモートによる自宅勤務で作業を進め、無事に決算時期を乗り越えることができたそうです。これをきっかけにリモートワークのルールが簡素化されることになったとのことです。

5-4.イデアラボ

株式会社イデアラボも同じく10年前からリモートワークを実施しています。同社は心理学の研究・コンサルティングを行う会社で、もともと「出社」という概念自体がありません。働く場所、曜日、時間を自由に決められる仕組みを導入しているのです。申告すら必要ないということから、かなり主体的な勤務体制といえます。

社員からは、「通勤のストレスから解放される」「混雑を避けて好きな時期に帰省や旅行ができる」「平日の昼間に予定を入れられる」など、好意的な意見が聞かれたといいます。会社としても社員のモチベーションが上がり、業績の向上に結び付けば理想的といえるでしょう。

6.リモートワークの運用を失敗しない3つのポイント

(画像=hikastock/stock.adobe.com)
リモートワークの運用に失敗しないためには、以下の3つのポイントが重要です。

6-1.まずはリモートワークができる環境づくり(ハード面)

まず1つ目のポイントはリモートワークを行うためのハード面での環境づくりが必要です。業務に必要なのは、①パソコン、②スマートフォンの機器類と、③ネットワークの接続環境、外部からのWeb会議参加が可能な状況の3つです。セキュリティの関係で個人のパソコン・スマホ使用を認めていない会社もあるようです。その場合は会社から貸与されます。

ネットワークへの接続は、スマホを使ったデザリング(スマホを介してパソコンやタブレットをインターネットに接続する機能)で行うのが便利です。外部からのWeb会議参加を可能にするためには、後述するWeb会議ツールをインストールする必要があります。

6-2.信頼関係のもと行われるのがリモートワーク

2つ目のポイントは社員を信頼して任せることが大事です。リモートワークは信頼関係がなければ成り立たないワークスタイルです。監視することはできないため、会社側としては本当に仕事をしているのか、懸念を持つこともあるでしょう。事例で紹介したサイボウズで当初行われていたように、成果報告を重視しがちになるのもやむを得ない部分があります。

しかし、ルールだらけの勤務体制では成果報告のための無難な仕事しかできず、大胆な発想も生まれにくくなります。社員を信頼して任せることで、生産性の向上につながればベストな形といえるでしょう。

6-3.積極的なコミュニケーションを促す環境づくり(ソフト面)

3つ目のポイントは社員間の積極的なコミュニケーションを促す環境づくりが重要です。Web会議を利用すればお互いの顔を見ながら複数人でコミュニケーションすることが可能です。Web会議用のツールには以下のようなものがあります。いずれも基本的には無料で利用できます。

・Zoom
現在、最もポピュラーといわれているツールです。高画質・高音質で定評があります。バーチャル背景を利用することができるので、プライバシーの面でも安心です。利用可能人数は最大50名程度。無料版では3人以上のグループ通話では40分までの制限があります。

・Google Meet
検索ツールとして最強のGoogleにもWeb会議用のツールがあります。Googleの他サービスとの連携が可能で便利です。利用時間の制限がないのも使いやすいポイント。利用可能人数は最大100名と多めです。Googleのアカウントにその都度ログインする必要があるのがデメリットです。

・BIZMEE
利用可能人数に上限がないのが特徴です。ホワイトボード機能、議事録機能などユニークな機能を搭載しています。チャット機能、録画機能、ファイル共有機能はありません。有料版がなく、全機能を無料で使えます。

7.リモートワーク導入で活用できる助成金

(画像=taa22/stock.adobe.com)
リモートワーク(テレワーク)導入で活用できる助成金があります。厚生労働省が実施している「働き方改革推進支援助成金(テレワークコース)」がその制度です。支援の概要はテレワークに取り組む中小企業事業者に対し、実施した費用の一部を助成するというものです。

テレワーク用通信機器の導入費用だけでなく、研修参加やコンサルティングを受けた費用など幅広い項目で助成が受けられます。申請の締め切りは2020年12月1日です。ただし、国の予算範囲内で行いますので、予算に達した場合は申請期限前でも終了になる可能性があります。

支給額は目標達成率によって異なりますので、詳細は厚生労働省ホームページでご確認ください。

8.まとめ

ここまで企業がリモートワークを導入するメリット・デメリットについて見てきました。アフターコロナを見据えた社会の要請もあり、今後もリモートワークを導入する企業は増えていくことが予想されます。本格的にリモートワークを実施した大手企業の導入効果が今後業績の変化という形で明らかになれば、中小企業にとっても導入へのはずみになるかもしれません。

これらの状況を踏まえ、リモートワークに失敗しない3つのポイントに挙げたハード面・ソフト面を有効に生かし、会社と社員間の信頼関係を構築していくことが大事といえるでしょう。

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