経営者の関心事
2020.5.25

新事業承継税制 上手に活用する5つのポイントをわかりやすく解説!

(画像=Naypong/Shutterstock.com)
(画像=Naypong/Shutterstock.com)
「そろそろ次世代のことを考えて事業承継を検討している」
「以前、顧問の先生に聞いたときにはあまりメリットがないということだったが、平成30年に始まった特別措置という新しい制度はメリットがあるらしい」
「もし、新しい制度を自社で使えるならば検討してみたい」

このように考えている経営者は多いのではないでしょうか。そこで本稿では、事業承継税制について以下の5つのことがわかるようにまとめました。

1.そもそも事業承継税制とは
2.具体的に何が変わったのか
3.税制を活用するための4つのポイント
4.失敗しないための注意ポイント
5.うまく活用できた事例

最後までお読みになれば、今回の事業承継税制について大まかな理解が進み、自社で検討すべき価値があるかを判断できるようになります。
<目次>
1.そもそも事業承継税制とは
1-1.なぜ、これまで事業承継が進まなかったのか
1−2.事業承継税制の概要

2.具体的に何が変わったのか
2-1.「事前の計画」と「適用期限」について
2-2.「対象」と「納税猶予割合」について
2-3.「継承パターン」について
2-4.「雇用確保」について
2-5.「継承困難な場合の対応」と「相続時精算課税の適用」について

3.税制を活用するための4つのポイント
3−1.税制を活用するための条件【事業承継前】
[ポイント1:経営者、後継者の条件]
[ポイント2:中小企業であるという条件]
3−2. 税制を活用するための条件【事業承継後】
[ポイント3:5年間は守らなければならない条件]
[ポイント4:猶予から免除になる条件]

4.失敗しないための注意ポイント
4−1.猶予が取り消されてしまう条件に注意!

5.うまく活用できた事例

6.まとめ

1.そもそも事業承継税制とは

(画像=PIXTA)
事業承継税制とは、後継者難を原因とした廃業を回避するために2008年に創設された制度です。具体的には、中小企業の現経営者から後継者が自社株式を贈与や相続した際に、本来支払うべき贈与税や相続税を猶予または免除をしてもらうためのもので、2020年現在、本税制には以下の2つがあります。

・一般措置
・特別措置

特別措置は2018年にスタートし、2027年までという期限が設けられています。この特別措置の創設により、2018年~2027年は特別措置での事業継承ができます。

1-1.なぜ、これまで事業承継が進まなかったのか

事業承継のための税制は税金免除の条件があまりにも厳しく、制約の多さから使い勝手が悪いため、何度か改正はされたものの、利用者が増えませんでした。経済産業省中小企業庁が2019年2月5日に公表した「事業承継・創業政策について」によれば、2015年~2025年の間に引退年齢を迎える事業主は全国に約245万人、そのうちの半数は後継者・事業承継の有無が決まっていない状態です。

このまま放置すると近い将来、日本のGDPと雇用の消失が甚大になることが予想されました。そこで国は、この10年間で集中的に事業継承のサポートをする期間として、2018年に事業承継税制の特別措置を創設しました。

1−2.事業承継税制の概要

本項では、事業承継税制の仕組み、適用期間、申請書類などをまとめてあります。ただし、特別措置に関しては2章にまとめがあります。

(1)仕組み
以下の図はカンタンな事業承継税制の仕組みです。現経営者が後継者に事業を継いでもらう時に、都道府県知事から事業承継税制による納税猶予の認定交付を受けます。
 

後継者は納税猶予を事業の承継に必要な期間、継続申請をして納税猶予を受け、その間は税務署に担保を預けます。
以下、「贈与税」と「相続税」の順序を入れ替えてください。「相続税」を先に。

●相続税
現経営者の相続または遺贈により、後継者が相続した自社株に対しての相続税が猶予または免除されます。(一般80%、特別措置100%)

●贈与税
現経営者から後継者への贈与により、後継者が取得した自社株の贈与税が猶予または免除されます。

猶予は一定の要件を満たさなくなると納税義務が復活します。免除とは、納税義務が消滅することです。

(2)適用期間 
平成30年に制定された特別措置のみ、平成30年~令和9年12月末までの適用期間があります。

(3)申請書類
必要書類と入手先は以下の通りです。情報や書式は随時更新される可能性がありますので、ご利用の際は、必ず中小企業庁サイトでご確認の上、最新版をダウンロードしてください。

【相続税・贈与税】
認定申請(相続の場合は被相続人の住所がある都道府県庁へ届出)
必要する書類 主な添付書類
【相続】
・先代経営者から後継者へ相続(第一種経営承継続)認定申請書(様式8)
添付書類ガイドライン

・先代経営者以外の株主から後継者へ相続(第二種経営承継相続)認定申請書(様式8の2)

【贈与】
・先代経営者から後継者へ(第一種経営承継贈与)認定申請書(様式7)  
添付書類 ガイドライン

・先代経営者以外の株主から後継者へ贈与
(第二種経営承継贈与)
認定申請書(様式7の2) 
● 定款及び株主名簿の写し
● 登記事項証明書
● 遺言書又は遺産分割協議書の写し及び相続税の見込額を記載した書類 *
● 従業員数証明書
● 貸借対照表、損益計算書等
● 上場会社又は風俗営業会社でない旨の誓約書
● 被相続人、相続人及び株式を保有している
● 親族の戸籍謄本又は抄本
● 【贈与税】贈与契約書写し
納税猶予(相続の場合は被相続人の住所がある都道府県庁へ届出)
必要書類 主な添付書類
・相続税の申告書

・非上場株式等の明細及び納税猶予分の相続税額の計算に関する明細書等を添付する
【参照:国税庁 相続税申告書様式一覧
● 都道府県知事から交付された認定書の写し
● 都道府県庁へ提出した認定申請書の写し
● 定款及び株主名簿の写し
● 登記事項証明書
● 従業員数証明書
● 後継者の戸籍謄本又は抄本
● 遺言書又は遺産分割協議書の写し及び相続人全員の印鑑証明書 *(遺産分割協議書に押印したもの)
● 貸借対照表、損益計算書等
*【贈与税】には贈与契約書写しが必要
その他、一般措置で使われる必要書類は中小企業庁のサイトで最新情報を確認してください。

【関連記事】
事業承継を成功させるための3大テーマ承継の「仕組み」「選択肢」「税金と優遇策」

2.具体的に何が変わったのか

(画像=alphaspirit/Shutterstock.com)
本章では一般措置と特別措置の違いをまとめています。特別措置の創設により、一言で表現すれば、事業継承のリスクが減りました。表がありますので、比較の参考にしてください。
 
  特別措置(2018年より) 一般措置
①事前の計画 5年以内の提出
(2018/4/1~2023/3/31)
不要
②適用期限 10年以内の贈与と相続
(2018/1/1~2027/12/31)
なし
③対象 全株式 総株式数の2/3まで
④納税猶予割合 100% 贈与:100%  相続:80%
⑤継承パターン 複数株主から最大3人の後継者 複数株主から1人の後継者
⑥雇用確保 弾力化 承継後5年間は平均8割の雇用維持が必要
⑦継承困難な場合の対応 あり なし
⑧相続時精算課税の適用 60歳以上の者から20歳以上の者への贈与 60才以上から20歳以上の者への贈与推定相続人(直系卑属)・孫への贈与
【参照:経営承継円滑化法申請マニュアル【相続税、贈与税の納税猶予制度の特例】令和2年4⽉施⾏

特に重要なのは太字にしてある③④⑥の部分です。

一般措置では、納税猶予の対象となる株式(発行済議決権株式総数)の上限が全体の2/3(③)で、相続の場合の猶予割合は80%(④)です。この条件では、2/3×80%=53%の自社株は猶予されても、残りの47%に対しては納税が必要でした。

自社株の評価額によっては莫大な税額になるため、事業承継最大のリスクとされていました。しかし、特別措置では株式の上限と猶予割合の制限が外れ、自社株承継時の納税割合が0になります。

そして、⑥の雇用確保には「弾力化」とありますが、これは実質上、撤廃という意味になります。一般措置では、生前贈与以降の5年間平均で当初の80%の雇用者数の維持が義務であり、この条件をクリアできないと即・税制適用が撤廃でした。こうなると猶予してもらっていた税金の全額納付が義務となるため、事業承継をする前と同じ状態か、さらに悪い状態になるケースもあります。

例えば、不測の経済的打撃などに対処できずにリストラを余儀なくされることもあります。このような場合、後継者は
  • 売上げは下がる
  • 人員は減る
  • 同時に多額の納税義務が発生
というようなことが考えられます。特別措置では、認定経営革新等支援機関(認定支援機関)の見解が記載されていれば、雇用確保割合80%を切ったとしても、税制適用が継続できます。

以上のように、事業承継にまつわる税金支払いのリスクを大幅に下げ、事業が継承しやすいようにしてあります。

2-1.「事前の計画」と「適用期限」について

  特別措置(2018年より) 一般措置
①事前の計画 5年以内の提出
(2018/4/1~2023/3/31)
不要
②適用期限 10年以内の贈与と相続
(2018/1/1~2027/12/31)
なし

本税制は期間限定の税法なので、①②を合わせると
  • 5年以内に計画を提出する
  • 10年以内に継承を完了させる
必要があります。

例えば、最終申告日の令和5年(2023年)3月31日に計画提出した場合、令和9年(2027年)の12月31日までに継承を終了していないとなりません。つまり事業継承を検討し始めたら、自社の事情が許す限り早めに計画を提出してしまったほうが、猶予を受けながら腰を据えた事業承継ができるのです。

2-2.「対象」と「納税猶予割合」について

  特別措置(2018年より) 一般措置
③対象 全株式 総株式数の2/3まで
④納税猶予割合 100% 贈与:100%  相続:80%

対象株式が2/3までだったものが、全株100%納税猶予に変更されました。

また、一般措置では猶予される相続税は80%分で20%分は支払わなければなりませんでしたが、特別措置では相続税の全額が納税猶予の対象となり、「③対象」と合わせ相続税の支払なしで株式を引き継げます。

2-3.「継承パターン」について

  特別措置(2018年より) 一般措置
⑤継承パターン 複数株主から最大3人の後継者 複数株主から1人の後継者

これまで後継者は1人でしたが、特別措置では最大3人まで対象になります。この場合、対象者とは以下の要件を満たした人を指します。
  • 議決権の10%以上を持つ
  • 議決権の順位が一族の中で2位・3位である
ただし、納税猶予分が相続時に相続財産に加算されますので、相続税が高くなるため相続人間でのもめ事になりやすい傾向があります。複数の後継者を育てる場合には、遺言書を書いて、トラブルを未然に防ぐ用意は必要です。

2-4.「雇用確保」について

  特別措置(2018年より) 一般措置
⑥雇用確保 弾力化 承継後5年間・平均8割の雇用維持が必要

一般制度では適用を受けてから5年間は、平均8割の雇用を確保しなければなりませんでした。不測の経済変化によりこの要件が維持できなくなると、即・取消されて猶予分を全額納付が義務でした。

しかし、特別措置では認定経営革新等支援機関(認定支援機関)の見解が記載されていれば、雇用確保割合80%を切ったとしても、税制適用が継続できるようになりました。これで実質的には、雇用確保が不測の経済状況などで維持できなくても、猶予の取り消しをされるリスクがなくなりました。

2-5.「継承困難な場合の対応」と「相続時精算課税の適用」について

  特別措置(2018年より) 一般措置
⑦継承困難な場合の対応 あり なし
⑧相続時精算課税の適用 60歳以上の者から20歳以上の者への贈与 60才以上から20歳以上の者への贈与推定相続人(直系卑属)・孫への贈与

継承困難な理由として、主に業績不振が挙げられます。
  • 過去3年間のうち2年以上が赤字
  • 過去3年間のうち2年以上、売上減少
  • 有利子負債が売上の6ヵ月分以上ある
  • 類似業種の上場企業の株価が前年を下回っている
  • 後継者が心身の故障等で業務の継続が困難な場合(譲渡・合併のみ)
上記が当てはまる場合は、条件が発生した日から2ヵ月以内に申請書を提出すれば、租税特別措置法

第70条の7の5第12項・第13項
第70条の7の6第13項・第14項
第70条の7の8第17項

において準用する同法第70条の7の6第13項・第14項を根拠として、猶予中の贈与税額・相続税額を免除が受けられます。
【参照 国税庁:特例対象株式等についての納税猶予の贈与税・相続税の差額免除申請書(特例措置)
【参照 国税庁:措置法第70条の7の5(非上場株式等についての贈与税の納税猶予及び免除の特例)関係

贈与の対象が、身内以外にも適用されます。これにより、自分の子供など以外からも事業の後継者を選ぶことができるようになりました。

3.税制を活用するための4つのポイント

(画像=PIXTA)
本章では、事業承継の税制を使うために確認しておくポイントをまとめました。

3−1.税制を活用するための条件【事業承継前】

[ポイント1:経営者、後継者の条件]
先代経営者の条件として、本税制を採用する前の段階で以下をクリアしていることです。

【相続・贈与共通】
  • 会社代表であったこと。過去に一度でも代表権を持っていた時期があればよい。
  • 議決権の過半数を保持した筆頭株主であったこと。先代経営者は最大株式保有をしていた時期が必要です。
【贈与税】
  • 贈与時には代表を辞任していること。
次に、後継者の条件(親族以外でも適用)として、本税制を採用する前の段階で以下をクリアしていることです。

【相続・贈与共通】
  • 議決権の過半数を保持した筆頭株主であること
【相続税】
  • 相続開始直前の時点で役員であり、相続開始5ヵ月後に代表であること。
【贈与税】
  • 贈与時に20歳以上、贈与直前に役員3年以上の代表であること。
【参照:中小企業庁 事業承継税制(贈与税・相続税の納税猶予及び免除制度)について 事業承継の概要
 

[ポイント2:中小企業であるという条件]
中小企業とは以下の企業を指します。資本金の大きな大規模な事業も含まれます(参考:中小企業庁 中小企業者の定義)。以下の要件のうち、資本金か従業員数のどちらかを満たす必要があります。

業種 資本金 従業員数
製造その他業種(卸売・小売り・サービス以外) 3億円以下 300人以下
ゴム製品製造業(自動車または航空機タイヤ・工業用ベルト以外) 900人以下
卸売 1億円以下 100人以下
小売 5,000万円以下 50人以下
サービス 5,000万円以下 100人以下
旅館 5,000万円以下 200人以下
ソフトウエア、情報処理サービス 3億以下 300人以下

さらに、以下の要件も満たす必要があります。
  • 上場企業ではない、風俗営業会社ではないこと
  • 1人以上の従業員がいること
  • 資産保有型会社(資産管理会社とも言います)などに該当していないこと
(参照:国税庁措置法第70条の7関係

3−2.税制を活用するための条件【事業承継後】

[ポイント3:5年間は守らなければならない条件]
贈与税・相続税とも、猶予適用全体の流れは以下の図のような形になり、猶予を継続するために事業継承後5年間は必ず守らなければならない条件があります。

【相続税の場合】
 

申請期間:相続開始8ヵ月目以内に申請

<認定書交付後の5年間>
認定書交付後5年間は、年1回、都道府県庁には認定のための要件を維持しているか、税務署には引き続き猶予特例を受ける旨を、年次報告することが条件です。

<5年経過後>
猶予開始から5年後、引き続き納税猶予の特例を希望する場合は3年に1回、継続届出書を税務署に提出します。

【贈与税の場合】
 

申請期間:贈与をした翌年の1月15日までに申請

<申請期限後5年間>
申請期限後5年間は年1回、都道府県庁には認定のための要件を維持しているか、税務署には引き続き猶予特例を受ける旨を、年次報告します。

<5年経過後>
猶予開始から5年後、引き続き納税猶予の特例を希望する場合は3年に1回、継続届出書を税務署に提出します。
 

[ポイント4:猶予から免除になる条件]
以下のような場合、猶予されていた税額は全額免除され、税金の支払い義務が消滅します。「(特例)」と書かれたもの以外は、一般措置・特例措置共通です。

以下、「贈与税」と「相続税」の順序を入れ替えてください。「相続税」を先に。

【相続税】
1.後継者の死亡

2.(特例)承継期間の経過後に、事業の継続が困難な一定の事由で会社が譲渡・解散
(一定の事由とは)
①過去3年のうち2年以上赤字
②過去3年のうち2年以上売上減
③売上の6か月分よりも有利子負債が多い
④類似業種の上場企業の株価が前年の株価を下回る
⑤心身の故障等により後継者による事業の継続が困難な場合(譲渡・合併のみ)

3.(特例)承継期間内にやむを得ない理由により会社の代表では亡くなった日以降に免除対象贈与をする
(やむを得ない理由)
●精神障害者健康福祉手帳の交付を受ける
●身体障害者手帳の交付を受ける
●要介護認定を受ける
 
1.    (特例)承継期間の経過後に「免除対象贈与」を行った場合
2.    (特例)承継期間の経過後に会社の破産手続開始の決定があった場合

【贈与税】
1.先代経営者等(贈与者)の死亡

2.後継者(受贈者)の死亡

3.(特例)承継期間の経過後に、事業の継続が困難な一定の事由で会社を譲渡・解散した場合
(一定の事由とは)
①過去3年のうち2年以上赤字
②過去3年のうち2年以上売上減
③売上の6ヵ月分よりも有利子負債が多い
④類似業種の上場企業の株価が前年の株価を下回る
⑤心身の故障等により後継者による事業の継続が困難な場合(譲渡・合併のみ)

4.(特例)承継期間にやむを得ない理由により会社の代表ではなくなった日以後に免除対象贈与する
(やむを得ない理由)
●精神障害者健康福祉手帳の交付を受ける
●身体障害者手帳の交付を受ける
●要介護認定を受ける

5.(特例)承継期間経過後に「免除対象贈与」をした場合

6.(特例)承継期間の経過後に会社の破産手続開始決定があった場合

■関連記事
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4.失敗しないための注意ポイント

(画像=Jirsak/Shutterstock.com)
本章では、せっかく申請をして納税猶予を受けた税制をうっかり取り消されないために、知っておいたほうが良いポイントをまとめました。

4−1.猶予が取り消されてしまう条件に注意!

贈与税・相続税の申告期限から5年間を「事業承継期間」といいますが、この期間に下記の要件を満たしていないと猶予取消になります。
  1. 報告・届出がない(毎年一回、都道府県・税務署への報告・届出が必要)
  2. 後継者が代表者でなくなったとき(身体障害者手帳の交付などの場合をのぞく)
  3. 5年平均の従業員数が、贈与相続開始時の8割を下回ったとき(雇用確保要件参照)
  4. 後継者を含む同族関係者の議決権が50%を下回った時
  5. 後継者が筆頭株主ではなくなった時
  6. 納税猶予の対象株式を一部でも売却した時(即・取消)
  7. 会社が破産・清算
猶予取消後は、納税義務が復活し、全額を2ヵ月以内に即納する必要があります。また5年過ぎても、免除の認定を受けるまでは以下の事項にも注意しましょう。
  1. 税務署に3年に1回の届出を怠ったとき取消
  2. 会社が資産管理会社になったとき取消(従業員5人以上はOK)
  3. 納税猶予対象株式の全部または一部を売却した場合は譲渡分のみ取消
  4. 本業の収入がゼロになった場合は取消(副業部分で収益を補っていても取消されます)
届出・報告などはうっかり忘れてしまうことがあるでしょう。しかし、本件だけは「うっかり」で会社ごと消滅する可能性がありますので、注意が必要です。実際、これらの細かい税制内容を理解して遵守しながら、事業の継承と通常業務を同時に進めるのは物理的・精神的にも難しいので、なるべく専門家に相談することをおすすめします。

自社の顧問税理士がいる場合は、株価評価の計算法などに詳しくなくても、事業承継税制を利用するために顧問税理士を変更する必要はありません。この場合は、株価評価だけを個別に依頼しましょう。

外部で専門家を探す場合は、資産税に強い税理士が適任です。専門的な分野で大きなお金が長期にわたって動きますので、組織的に動いてくれる税理士事務所が良いでしょう。

5.うまく活用できた事例

(画像=Jirsak/Shutterstock.com)
中小企業庁の活用事例をまとめました。事業承継の参考にしてください。
ケース1>100年続くインフラ整備会社(石川県)
●    業種:建設業(インフラ系)
●    年商:18億円
●    従業員数:31人
●    認定日:2019年2月
●    納税猶予:非公開株 100%猶予

・後継者:息子
・継承までの経緯:

早期継承を視野にいれながら同業他社で修行。業界全体の動きを把握し取引先とも良好な関係性を作ってから代表就任

・事業承継税制について:

知人から特別税制の話を聞いた後継者が、先代経営者に提案する形で進行した。

ケース2>先代経営者の高齢化による事業継承(愛媛県)
●    業種:電子機器製造
●    年商:1億1,800万円
●    従業員数:9人
●    認定日:2019年1月
●    納税猶予:非公開株 100%猶予

・後継者:息子
・継承までの経緯:

継承前は、非課税の範囲で株式譲渡。
息子は自身で相続税の積み立てをコツコツしていた。

・事業承継税制について:

特別措置を知り採用。税制面での心配がなくなり、事業に集中できるようになった。

ケース3>先代経営者の高齢化による事業継承(千葉県)
●    業種:訪問介護と看護事業グループ
●    年商:27億円
●    従業員数:341人
●    認定日:2019年1月
●    納税猶予:2億9,000万円 100%猶予

・後継者:息子
・継承までの経緯:

4社のグループ事業の株を父母が所有。全株を息子に集中譲渡し、100%持ち株会社にしたかったので対応策を探していた。

・事業承継税制について:

夫婦で4社分の株式を保有していたが、贈与税が多額になるため頭を悩ませていた。特例を活用すれば夫婦二人分の株でも適用されることを知り、採用。

【出典元:法人版事業承継税制の活用事例

6.まとめ

いかがでしたでしょうか。事業承継税制に関して以下のようにまとめました。

1.そもそも事業承継税制とは
2.具体的に何が変わったのか
3.税制を活用するための4つのポイント
4.失敗しないための注意ポイント
5.うまく活用できた事例

従前の一般税制と比較すると、特例措置には事業を代替わりさせるためのサポートが多くあることがわかり、税制の大まかな内容がつかめ、自社でも採用を検討してみようかと前向きになれたのではないでしょうか。

ただ、特別措置は期間限定の税法のため、ご自身の事業承継のプランなどを含めて綿密な計画が必要になります。事業承継税制には様々な相談先がありますので、ご活用ください。

6-1.相談連絡先一覧

中小企業庁 各都道府県ごとの担当窓口
東京都産業労務局 電話での事前予約が必要03-5320-4785
・国税庁 相談窓口
・国税庁 チャットボット
・税務署 全国相談窓口
・各都道府県ホームページでも紹介がある場合があります。例:神奈川県

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