経営者の関心事
2020.5.18

同族会社のメリットとデメリット ~トラブル回避のために整理しておきたいこと

(写真=PIXTA)
(写真=PIXTA)
少子高齢化を迎えた現在、日本の中小企業の多くは事業承継の問題に直面しています。

特に、中小企業の約96%が同族企業であることから、その悩みは非同族会社に比べて深刻です。理由としては、創業者一族内の相続の問題と会社経営の問題が複雑に絡むこと、そして取引先やその他の株主、従業員など第三者に対する慎重な配慮が必要になることがあります。現状とメリット・デメリット、そして対策について挙げてみましょう。

日本の同族企業の現状

日本の同族会社の多くは現経営者が60代後半となったことから、将来の事業承継計画を立てるべき時期を迎えています。しかし、多くの企業は、円滑な事業承継が将来の経営の発展を担うカギとなる重要なテーマであると認識しつつも、準備に着手していないのが現状です。

これには理由が2つあります。一つは、事業承継問題が目先の利益に直結する日常の経営問題に比して疎かにされやすい点です。もう一つは、事業承継が「現社長の引退」に直結するため、現経営者自身だけでなく家族や従業員から話題に挙げることがはばかられる点があります。

このような点から、事前対策をしておきたい気持ちがありつつも先延ばしになっているというのが現状です。結果、現経営者の病気などやむを得ない事情であわただしく後継者を決めざるを得なくなるのです。そして、事業の業績悪化や存続の危機につながってしまうケースとなることも少なくありません。

>>【関連記事】世代交代、次世代育成……経営者の引き際の考え方とは

同族企業のメリット・デメリット

では、同族企業であることは企業経営においてどのようなメリット・デメリットとなるのでしょうか。

1. メリット
  • 経営の中心メンバーが家族であることにより、チームとしての力が高まりやすく、意思決定や実行が素早く進む
  • 後継者候補となる者が現経営者の子どもであることから、企業の雰囲気や内情に通じやすい。結果、後継者育成が順調に進む可能性が高くなる。
  • 自社株の保有が身内に限られるため、第三者に経営を脅かされる可能性が低い。
2. デメリット
  • 「会社の信用=現経営者(特に創業者)個人の信用」であることから、経営者の交代以降、会社の取引が不安定になりやすい
  • 相続と事業承継が複雑に絡むため、相続問題により経営者一族が「争族」になった場合には、会社経営そのものに危機が訪れる可能性がある
  • 相続を繰り返すにつれ、気心の知れた身内で保有していた株が、徐々に遠い親戚に承継されることで、会社の経営基盤が危うくなる恐れが生じる
  • 後継者にふさわしい人物が身内にいなかった場合、会社の存続が危ぶまれる
 同族企業のメリットを享受できるのは、現経営者が元気である期間に限られる傾向にあります。二代目、三代目…と承継を繰り返すことにより、メリットがデメリットに転じる可能性が高くなるのです。

スムーズな事業承継のためには事前の対策が欠かせない

同族企業のスムーズな事業承継を行うには、現経営者が事前の対策を講じることが必要です。その場合、以下のポイントが挙げられます。

1. 後継者候補の育成は現経営者が現役のうちに行う

事業承継において、後継者の育成はもっとも重要な課題であり、その育成には通常5年から10年かかるとされています。手間暇をかけた後継者の育成は、現経営者と後継者のためだけでありません。

その間に、後継者を次の経営者として経営者家族や取引先、従業員、金融機関等に認識してもらい、信頼関係を築き、将来の企業経営をより安定させるという側面もあります。現社長を気遣って先延ばしにするのではなく、将来起こり得る事業承継の時期から逆算して、今から対策を練っておかなくてはなりません。

2. 事業承継の時期にきちんと現状を把握しておく

同族企業で事業承継が難航する理由の一つとして「経営者、株主、役員、従業員のそれぞれが、企業経営において同じ方向を向いていないケース」が見受けられます。

会社関係者の全員が経営理念を把握していない、あるいは事業の発展や維持について意思が統一されていない状態は、今後の企業経営の足を引っ張る結果になりかねません。会社関係者の全員が同じ方向を向くためには「己の会社を知ること」、つまり全員が現状を把握する必要があるのです。

経営理念や歴史は、目に見えない要素であり、会社の財務諸表に直接には現れません。しかし、創業から事業承継に至る長期にわたって会社経営の基盤となってきたものです。

会社関係者が将来に向けて団結する一助になるだけでなく、今後の時流に合わせた経営の方針のヒントにもなるでしょう。

3. 専門家に早めに相談を

2013年の中小企業庁のアンケートによれば、事業承継がうまくいかなかった理由の一つに、「事業承継に関して誰にも相談しなかった」が、将来の業績悪化への不安や後継者問題に次いで3番目に挙がります。

普段の経営の相談は顧問税理士や会計士に対して行うにも関わらず、この結果の理由として「相談しても解決するとは思えなかった」が76%を占めています。

中小企業庁の「中小企業白書2019」によると、事業承継した経営者が相談した相手として、家族・親族、後継者についで3番目に「外部の専門機関・専門家」という結果となっています。

専門家は、いわば「ホームドクター」です。もっとも身近で頼りになる第三者とも言えるでしょう。よりよい事業承継を望むなら、「相談しても解決しない」と思いこむのではなく、まずは心の内に抱えている不安を打ち明けることから始めてみてはいかがでしょうか。

(参照:国税庁「会社標本調査結果 平成29年度分統計表」)
(参照:中小企業庁「中小企業白書2014/2019」)
(参照:経済産業省「中小企業の事業承継に関する集中実施期間について(事業承継5ヶ年計画)」)

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