経営者の関心事
2020.2.27

海外不動産運用の税制が大幅変更 2020年度税制改正で海外不動産減価償却スキームが否定

(画像=supawat bursuk/Shutterstock.com)
(画像=supawat bursuk/Shutterstock.com)
2020年度(令和2年度)税制改正大綱が2019年12月20日に閣議決定されました。2020年1月20日から始まった通常国会で可決・成立する運びとなり、新年度から施行されることとなります。

この中で、海外不動産運用の所得に関する損益通算についての制度変更があります。これによって、一部富裕層に重宝されていた「海外不動産を利用しての所得税負担を軽減する仕組み」の効果がなくなりました。この点を詳しく見ていきます。

何が改正されたのか

今次の税制改正大綱の「3.租税特別措置等」において、以下の条文が入ることとなりました。

「個人が、令和3年以後の各年において、国外中古建物から生ずる不動産所得を有する場合において、その年分の不動産所得の金額の計算上国外不動産所得の損失の金額があるときは、その国外不動産所得の損失の金額のうち国外中古建物の償却費に相当する部分の金額は、所得税に関する法令の規定の適用については、生じなかったものとみなす。」

参照:財務省「令和2年度税制改正の大綱」

つまり、海外不動産運用の所得計算において、収支が赤字の場合、減価償却費を損失として計上することは認めないということです。裏を返すと、これまでは認められてきたわけですが、この「海外不動産運用の減価償却」がなぜそんなに重要だったのでしょうか。

不動産所得の計算をするにあたって、減価償却は大きなパートを占めます。その物件が法定耐用年数内であるならば、その年数に応じた償却率に基づいて計算します。物件(建物部分)の取得価格×償却率がその年の減価償却費です。これは「定額法」と呼ばれ、2016年4月1日以降取得した不動産はすべてこの方式が採用されます。償却率は、国税庁の「減価償却資産の償却率表」にて定められています。

問題は耐用年数を超えた築古の不動産建物のケースで、「簡便法」と呼ばれる計算方法があります。計算式は以下の通りです。

耐用年数=法定耐用年数×0.2

例えば、築25年の木造建物の場合、22×0.2=4.4となり、小数点以下は切り捨てとなりますので、耐用年数4年と計算されます。つまり、不動産の取得価格(建物部分)の1/4を4年間に渡り毎年減価償却費として計上できるわけです。

なぜ海外不動産なのか

それでは、なぜ海外不動産が問題となるのでしょうか。前章まで減価償却費の計算方法を見てきましたが、日本では、耐用年数を超えた建物の価値は非常に低くなる傾向にあります。土地部分は減価償却できませんので、不動産価格のほとんどが土地部分となると減価償却のメリットが生かせません。国内で不動産を運用する場合、この仕組みは、あまりインパクトがありませんでした。

そこで海外不動産が注目されました。とくにアメリカは中古の木造物件が非常に多く流通しており、築22年オーバーの物件も普通に売買され、入居者の賃貸付けも容易なのです。建物部分の価値も残存するばかりか、物件によっては「ヴィンテージハウス」として価値が上昇するほどです。

具体例を考えてみましょう。土地2,000万円、建物8,000万円、合計1億円の築30年木造住宅があったとします。簡便法により、8,000万円÷4で2,000万円の減価償却が4年間毎年取れることになります。現実にはありえないケースですが、仮に賃料収入が0だとするとこの2,000万円を国内の所得と損益通算することで、課税所得が2,000万円下がることになります。

また、売却という「出口戦略」も描きやすいです。以上の仕組みによって、一部富裕層の間でブームになったわけです。

税制改正の注意すべき点

この「海外不動産スキーム」は、日本の減価償却計算方法と海外(主にアメリカ)の不動産事情とが奇妙にマッチした「数字のマジック」と呼べるものでした。この仕組みに対しては、従来から「税金逃れだ」「不公平だ」という声があったのは事実です。それを受けて、結局税務当局は2020年度税制改正で海外不動産スキームを否定することとなったのです。

詳細部分はこれから省令・通達などで決定されると思いますが、注意しなければいけないのは以下の3点です。

1 開始は2021年(令和3年)以降の確定申告からとなりますので、2020年(令和2年)までは従来スキームが使用することは可能です。

2 あくまで「収支が赤字のうちの減価償却費を除く」ということですので、確定申告において減価償却費を計上してはいけないということではありません。

3 簡便法を否定しているのであって、条文にあるように「所在地国の法令における耐用年数としている旨を明らかにする」ことによって認められることもありえます。

4 個人の所得税の問題なので、法人が所有する不動産について改正はありません。ただし、個人から法人へ不動産を譲渡する場合、その該当国の法令によっては金銭的・人的コストがかかるケースがありえます。

もしこのスキームをすでに運用されている方、これから運用しようと考えている方は、専門の税理士、会計士、不動産会社によく相談して対策を立てることをお薦めします。

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