経営者の関心事
2020.6.1

自社ビルをZEB化するメリット ESG経営と企業価値向上

(画像=Wang An Qi/Shutterstock.com)
(画像=Wang An Qi/Shutterstock.com)
ZEB(ゼブ)という言葉をご存じでしょうか?ZEBは「Net Zero Energy Building(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)」の略称で建物における消費するエネルギーをゼロにすることを目指した建物のことです。地球温暖化対策やエネルギー需給の安定化の観点からもZEBの普及が求められています。ESG経営と企業価値向上を目指して自社ビルをZEB化するメリットとはどんなことでしょうか?
<目次>

1.企業価値を高める「ESG経営」とは
・Environment(環境)
・Social(社会)
・Governance(企業統治)
・ESG経営が注目されるようになった背景
1-1.ESG経営がどのように企業を成長させるのか?
・顧客への影響
・従業員への影響
・取引先への影響
・投資家への影響
1-2.ESG経営のメリット・デメリット
【メリット】
・キャッシュフローが増える
・リスク管理の高まり
・ブランド力の強化
【デメリット】
・短期でのリターンは期待できない
・何をやるのかの選定に手間がかかる

2.環境面から企業価値を高める「自社ビルのZEB化」
2-1.ネット・ゼロ・エネルギーとは?
・パッシブ技術
・アクティブ技術
2-2.ZEBの3段階の定義
・「ZEB Ready(ゼブ・レディ)」
・「Nearly ZEB(ニアリー・ゼブ)」
・「ZEB」
2-3.自社ビルのZEB化で得られる4つのメリット
(1)光熱費の削減が可能
(2)快適性・生産性が向上する
(3)BCP(事業継続計画)の観点で優位
(4)不動産価値の向上とともにオーナーの企業価値が向上する
2-4. ZEBの普及は国家的な要請になっている

3.ネット・ゼロ・エネルギー・ビルの事例

4. ZEBやその他の評価制度取得で得られるアドバンテージ

1.企業価値を高める「ESG経営」とは

(画像=PIXTA)
企業価値を高める経営戦略として「ESG経営」に注目が集まっています。ESG経営とは、企業が成長するために必要な「Environment(環境)」「Social(社会)」「Governance(企業統治)」といった3つの要素を重視する経営です。

・Environment(環境)

COP(国連気候変動枠組条約締約国会議)からも警告されている地球温暖化などの自然環境問題に対する企業の取り組みのことです。具体的には環境汚染への配慮や省エネ、CO2(二酸化炭素)排出量の削減などが挙げられます。

・Social(社会)

社会に及ぼす影響のことを指します。労働環境の改善や人権への配慮など地域社会への貢献が高い企業がESG経営では評価されます。

・Governance(企業統治)

ESG経営においてはコーポレートガバナンスのことを指し企業の内部を統制する仕組みを表す言葉です。不正行為や経営者の暴走を防ぐため、経営に関する内容や会計が正しく行われているかなどを監視します。また企業の持続的成長や中長期的な収益の向上につながる取り組みなども含まれます。

・ESG経営が注目されるようになった背景

ESG経営が注目されるようになったのは、2006年にPRI(責任投資原則)が提唱され国連のアナン事務総長が投資家の取るべき行動としてESGを推進したことがきっかけといわれています。以降、ESGは世界的に浸透し最近では「ESG投資」という言葉が使われるくらい注目されるようになりました。

1-1.ESG経営がどのように企業を成長させるのか

ESG経営は、どのように企業を成長させるのでしょうか。4つの影響から考えてみましょう。

・顧客への影響

Social(社会)の面でいえば地元企業との提携による「地産地消」や「地元ブランド」の創出などにより顧客に新たな商品を提供することができます。

・従業員への影響

労働環境の改善を通して生産性の向上が期待できます。結果的に経営効率などのガバナンスが評価され従業員の士気にも好影響を与える可能性があります。経営効率が上がり業績がアップすれば当然給与に反映されることもあるでしょう。

・取引先への影響

生産体制を見直すことで地域や業種の垣根を越えて新たな取引先を開拓する展開が期待できます。

・投資家への影響

ESGへの取り組みが高く評価されるようになると投資家からの資金が集まりやすくなります。コーポレートガバナンスの強化による経営の透明化や資本効率の向上などに期待して投資する人が増えれば株価の上昇にもつながるでしょう。

1-2.ESG経営のメリット・デメリット

ESG経営にはどのようなメリット・デメリットがあるのか、確認しておきましょう。

【メリット】

・キャッシュフローが増える

ESG経営に取り組むことで新規の顧客を獲得できる可能性が広がります。新たな収益源ができることで将来のキャッシュフロー増大につながり経営の安定化を図れることはメリットです。

・リスク管理の高まり

企業にとってリスク管理は大きな課題です。ESGの3要素の向上にしっかり取り組むことによって生産性の低下を防ぐことができます。結果的にリスク管理の強化につながるでしょう。

・ブランド力の強化

ESGを意識した経営を行っていくと企業の健全性が増すことで社会的信用が高まります。結果ブランド力の強化に結び付き顧客や投資家へのイメージアップにつながることはメリットです。

【デメリット】

・短期でのリターンは期待できない

ESG経営は、短期的な利益よりも企業の中長期的なビジョンが評価される側面があります。そのため取り組んだからといってすぐに顧客や投資家などから評価されるわけではありません。短期でのリターンを期待すると本質からそれてしまうリスクがあります。

・何をやるのかの選定に手間がかかる

ESG活動の対象は「顧客」「従業員」「取引先」「投資家」と多岐にわたるので「ESGを向上させるために何をやったらよいか」の選定に手間がかかります。同時にコストもかかりますので本当に効果がある施策を見極めることが重要です。

2.環境面から企業価値を高める「自社ビルのZEB化」

(画像=PIXTA)
ESGの環境活動の一環として自社ビルをZEB化するメリットについて考えてみましょう。その前に、ZEB(ゼブ)という言葉をご存じでしょうか?ZEBは「Net Zero Energy Building(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)」の略称で、建物で消費するエネルギーをゼロにすることを目指した建物のことを指します。詳しく見ていきましょう。

2-1.ネット・ゼロ・エネルギーとは?

ネット・ゼロ・エネルギーとは「エネルギー消費を正味でゼロにする」という意味です。本来、建物の中では人々が活動しているため、エネルギー消費量を完全にゼロにすることはできません。しかしパッシブ技術・アクティブ技術による省エネでエネルギー消費量を大幅に削減し創エネ技術でエネルギーを生み出すことによって実質的にゼロ・エネルギーにすることが可能なのです。

・パッシブ技術

パッシブ技術とは、窓や壁の断熱性能向上や日射熱を利用した暖房など機械に頼らない技術を指します。

・アクティブ技術

アクティブ技術は、高効率照明や高効率空調などの機械による省エネ技術を指します。創エネとは、太陽光発電や風力発電、バイオマス発電などの再生可能エネルギーのことです(ビルの場合は、屋上での太陽光発電パネル設置がほとんど)。

2-2.ZEBの3段階の定義

経済産業省資源エネルギー庁は、省エネ率の達成状況に応じてZEBを以下の表のように3段階に定義しています。
 
名称 定義 省エネ率[%]
(設計一次エネルギー消費量に対する基準一次エネルギー消費量削減率)
創エネ除く 創エネ含む
『ZEB』 年間の一次エネルギー消費量が正味 ゼロまたはマイナスの建築物 50%以上 100%以上
Nearly ZEB ZEB Readyの要件を満たしつつ、再生可能エネルギーにより年間の一次エネルギー消費量をゼロに近づけた建築物 75%以上
100%未満
ZEB Ready 外皮の高断熱化及び高効率な省エネルギー設備等を備えた建築物 50%以上
75%未満
(データ出典:環境省ホームページ)

創エネとは、創エネ機器(太陽光発電パネル、燃料電池、蓄エネ機器等)を用いて自らエネルギーを創り出す考え方や方法のことです。自治体や企業、一般家庭では創エネを含み100%以上の『ZEB』の達成を目指すことが望まれます。

2-3.自社ビルのZEB化で得られる4つのメリット

自社ビルをZEB化することによってどのようなメリットが得られるのでしょうか。主なメリットとして挙げられるのは以下の4つです。

(1)光熱費の削減が可能

エネルギー消費量が大きく減りますので光熱費を大幅に削減できます。ビルの規模が大きくなれば光熱費という固定費も膨大になり企業経営を圧迫しかねないため、削減できることは大きなメリットです。

(2)快適性・生産性が向上する

「パッシブ技術」「アクティブ技術」を通じた空調・照明設備の高度化によりオフィス内環境が向上することで業務効率が上がることが期待できます。

(3)BCP(事業継続計画)の観点で優位

創エネ施設があることは、停電時に大きな威力を発揮します。ビルとしての競争力の向上とともに、近隣住民の避難先として提供することで大きな社会的評価が期待できるでしょう。

(4)不動産価値の向上とともにオーナーの企業価値が向上する

自社ビルがZEBと認定されればSDGs(持続可能な開発目標)に配慮したESG経営を行っている企業と見なされ社会的評価を得ることが期待できます。

2-4.ZEBの普及は国家的な要請になっている

ZEBの普及は、国を挙げての大事業となっています。2014年4月に閣議決定された日本のエネルギー基本計画において「2020年までに新築公共建築物など、2030年までに新築建築物の平均でZEBの実現を目指す」とする政策目標が掲げられました。「なぜZEBの普及が急がれているのか」というと地球温暖化対策のために二酸化炭素排出を減らしエネルギー需給の安定化が国家目標となっているからです。

エネルギー消費の統計上、オフィスビルや商業施設は「業務部門」とされておりエネルギー消費量削減が急務になります。なぜなら省エネが叫ばれる近年にあって業務部門のエネルギー消費量の増大は、家庭部門(自家用車を除く家庭でのエネルギー消費)とともに際立っているからです。業務部門のエネルギー消費割合は、1990年度には全体の12.7%でした。

しかし2016年度には全体の16.0%にまで膨らんでいます。ちなみに部門は他に「産業部門」(製造業、農林水産業、鉱業、建設業の合計)と「運輸部門」(自家用車・バスなどの旅客部門と陸運・海運・航空の貨物部門)があり、両部門とも省エネ努力によって近年は徐々に減少傾向です。政府としては、業務部門のエネルギー消費量削減のためにもZEB化を促進させたい方針です。

環境省、国土交通省、経済産業省、厚生労働省が連携して補助制度を推進しています。その一例が環境省の「地域の防災・減災と低炭素化を同時実現する自立・分散型エネルギー設備等導入推進事業」(2019年度予算総額34億円)です。

3.ネット・ゼロ・エネルギー・ビルの事例

(画像=PIXTA)
環境省がホームページで公開しているネット・ゼロ・エネルギー・ビルの導入事例から茨城県行方市の藤崎建設工業本社ビルを紹介します。
 

茨城県行方市に位置する藤崎建設工業本社ビルは、鉄骨造、地上3階、延床面積651平方メートル、新築された低層ビルです。導入している設備は以下のようなものになります。

・屋根断熱
・外壁断熱
・Low-e複層ガラス
・外付けブラインド(太陽追尾式)
・井水利用空調設備
・高効率空調
・全熱交換器
・太陽熱給湯設備
・LED照明器具(人感センサー、明るさ検知)
・太陽光発電(46㎾)など

これらの設備を導入した結果、外皮性能削減率39%、省エネ率51%を実現しました。ZEB達成度も創エネを考慮した場合の数値で107%を達成し省エネ率に応じたZEB分類の最高クラス(創エネ考慮で省エネ率100%以上)である「ZEB」に認定される見込みです。
(データ・画像出典:環境省ホームページ) 

4.ZEBやその他の評価制度取得で得られるアドバンテージ

(画像=PIXTA)
ZEBに限らず環境・エネルギー性能の高い建物への評価制度は「BELS(ベルス)」「省エネ基準適合認定マーク(eマーク)」など数多くあります。それらの評価を得ていることは、ESG経営企業として大きなアドバンテージになるでしょう。これから自社ビルの購入を検討されている人は、「企業価値向上」「不動産価値向上」「環境などへのより広義な貢献」などのためにビル購入後自社ビルのZEB化を検討してみてはいかがでしょうか。

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