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2020.8.17

不動産市場の2022年問題とは?生産緑地問題から考える不動産戦略

(画像=Андрей Яланский/stock.adobe.com)
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不動産市場における「2022年問題」というものをご存じでしょうか?2022年問題は生産緑地制度の期限到来に伴い懸念されている問題です。本記事では、不動産市場に大きな影響を与える可能性があるといわれる2022年問題という視点から不動産戦略を解説します。

生産緑地の2022年問題とは

2022年問題とは「生産緑地」という農地の指定が2022年に一斉に解除される問題のことです。この「生産緑地」とは市街化区域内の農地または森林のことで、生産緑地法で定められた土地制度の一つです。最低30年間は農地・緑地として土地を維持する制約の代わりに、税制面で大幅な優遇が受けることができるものです。

2022年問題を正しく把握するために、まずは生産緑地制度について概観していきましょう。生産緑地を定めている生産緑地法は、農林漁業との調整を図りつつ良好な都市環境を形成することを目的として1974年に制定されました。

当時、人口の増加と高度経済成長を背景として首都圏を中心に急激な都市化が進行し緑地が宅地へと転用されることが増加しました。急速に市街地の緑地が減少し宅地の乱開発が進んだことが住環境の悪化や災害・公害を招き、大きな社会問題となっていたのです。そして1992年には生産緑地法が一部改正されることになります。

農地として保存すべき土地は「生産緑地」と宅地への積極的な転用を進めていくための「宅地化農地」の2種類を指定することとなりました。この生産緑地に指定されると市街化区域内であっても一般農地並みの固定資産税評価となるため、課税額は宅地化農地に比べて大きく下がるという大きな恩恵を与えるものでした。

・市街化区域内農地における固定資産税の評価・課税
 
・相続税納税猶予制度の適用条件等
 
参照:農林水産省

また相続や遺贈により取得した生産緑地を引き続き農業のために使用する場合、一定の要件のもとで相続税の一定額の納税猶予が認められ「終身営農すると免除になる」という特典もあります。ただし緑地を守るためにさまざまな義務が課せられるのも事実です。一つは生産緑地を農地として管理すべき義務(生産緑地法第7条1項)で営農義務とも呼ばれています。

もう一つは、農業用施設以外の建築や宅地の造成や土地の形質の変更を行うことの禁止です(生産緑地法第8条1項)。これは行為制限と呼ばれます。

2022年、市場に土地があふれる?

生産緑地法には恩恵があるものの厳しい制限もあるため、生産緑地保有者への救済制度も設けられています。それが生産緑地の「買取申出」と「解除」です(生産緑地法第10条)。まず、買取申出ができるのは、以下のケースに該当している場合となります。
  • 生産緑地地区の都市計画決定の告示日から30年を経過したとき
  • 主たる従事者が死亡、もしくは農業等に従事することを不可能とさせる故障を有することになったとき
「農業等に従事することを不可能とさせる故障」とは、次のような病気・怪我などを指します。
  1. 両眼の失明
  2. 精神の著しい障害
  3. 神経系統の機能の著しい障害
  4. 胸腹部臓器の機能の著しい障害
  5. 上肢・下肢の全部もしくは一部の喪失、その機能の著しい障害
  6. 両手・両足の指の全部もしくは一部の喪失、その機能の著しい障害
  7. 1~6までに掲げる障害に準ずる障害
このほか、1年以上の期間を要する入院、養護老人ホームに入所する場合、著しい高齢となり運動能力が著しく低下した場合なども含みます。なお、故障の認定に当たっては、医師の診断書に農林漁業を継続することが不可能である旨の記載が必要です。

現実的には、各市区町村に財政的余裕はないため、買取はほとんど行われないと見られており農地取得を希望する者へのあっせんとなります。ただそれが不調に終わり買取申出から3ヵ月以内に所有権の移転が行われないときには、生産緑地の管理義務、行為制限が解除されることになり「農地保有者は自由に市場に土地を売りに出せる」ということになるのです。

改正生産緑地法で大量に指定された告示の日が1992年のため、30年後が2022年に当たります。2017年「都市計画概況調査」によると生産緑地地区は全国で約1万2,972ヘクタールですが、その約8割が2022年に指定解除となると見られます。もしその膨大な土地が市場に投げ出されれば「需給バランスが崩れて土地価格の下落が起こるのではないか」と予想されているのです。

土地価格の暴落は本当に起きるのか?

2022年問題に対し政府は何も対策を行っていないわけではありません。2017年に生産緑地法の一部改正が行われ以下の3つが実行されました。
  • 指定面積要件の緩和(500平方メートルから300平方メートルへと縮小)
  • 特定生産緑地制度の創設
  • 行為制限の一部緩和(農家レストラン、野菜直売所などが認められる)
それらの施策を通じて生産緑地保有者から買取申出が一気に続出するのを防ごうとしています。また生産緑地は「都市農地」への施策のため、その存在は三大都市圏に集中している傾向です。しかし東京都に限定して見てみると多摩地域に多くあることが分かります。国土交通省が行った「平成31年都市計画現況調査」によると2019年度における東京都内の生産緑地面積は1位が八王子市で230.7ヘクタール、2位は町田市で217.3ヘクタール、3位は立川市で199.9ヘクタールでした。

2022年が到来してすぐに膨大な土地が市場に投げ出されることは考えにくいでしょう。しかし仮に不動産市場に影響があったとしても東京では多摩地域などの住宅地に限定されると見られています。例えば生産緑地そのものが存在していない都心5区(千代田区、中央区、港区、渋谷区、新宿区)などに関しては、2022年問題とほぼ無関係といいきって良いでしょう。

CRE戦略から見る2022年問題

2022年の生産緑地指定解除問題の概要を見てきました。これらの事実を踏まえて企業不動産(CRE)戦略としてはどのような選択をすれば良いのでしょうか。端的にいえば都市周辺部や郊外に自社ビルなどの不動産を保有することよりも「都心部の商業地に保有する」ということになります。現在すでに都市周辺部・郊外に不動産を保有している場合は「資産の組み換え」という手段も有力な選択肢の一つです。

なぜなら、それは2022年生産緑地問題へのリスクヘッジだけにとどまらず、将来的な成長性・資産性を見据えたCRE戦略としても有効なものと考えられるからです。たとえば、都心5区のオフィス集積地域は、そこに自社ビルがあるだけで企業ブランディングにつながる「ブランド立地」です。

人、モノ、情報などが集まる都心部は、企業のコアビジネスを伸長させていく環境を培うとともに、そこに自社ビルという不動産を保有すれば高い資産効果を得ることができるエリアでもあります。

自社使用分以外をテナントとして賃貸することも可能となり、安定した不動産収入を見込むことができるのです。また、将来的な出口戦略(=売却)においてもキャピタルゲインを期待することができる希少性の高い地域でもあります。

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