自社ビルのメリット
2020.4.2

自社ビルや住宅で資金調達可能!企業でも個人でも活用が進む「リースバック」の概要と企業の2つの実例

(画像=marvent/Shutterstock.com)
(画像=marvent/Shutterstock.com)
「リースバック」という不動産の売却方法をご存じでしょうか?リースバックとは不動産を売却したうえに同じ物件でリース(賃貸)契約を結ぶ資金調達方法のことを表します。企業では「リースバック」を活用しROA(総資産経常利益率)向上などの財務体質の強化や企業価値の向上を図る動きが活発化しています。また、個人でも長年住み慣れた家を変えることなく資金調達可能な「リースバック」という仕組みが浸透してきています。本稿では、リースバックの基礎的な概要と企業不動産におけるリースバックの実例について紹介します。
 
<目次>

1.リースバックとは

(画像=panitanphoto/Shutterstock.com)
リースバックとは、所有する不動産を売却したあとに新しい所有者と賃貸借契約を結ぶことができるシステムをいいます。通常の不動産売却との違いやメリット・デメリットは以下の通りです。

1-1.通常の不動産売却との違い

通常の不動産売却との違いは主に2つあります。

(1)売却しても住所が変わらない

通常の不動産売却との違いは、売ったあとに所有権を失っても住所に変更がないことです。引き続きその物件に賃貸で居住できるため、引っ越し代もかからないというメリットがあります。企業であれば、転居によって長年築いた営業地盤を失う心配がありません。

(2)リースバック業者が所有者になる

通常の不動産取引では、不動産会社は仲介を行うだけで買い手は別の個人または企業です。ところが、リースバックでは売った物件の所有者はリースバック業者になるため、比較的早く売却代金を得ることができます。買い手との賃貸契約の交渉も必要ないため、確実に同じ場所に住むことができるわけです。企業であれば、同じエリアで営業を続けることができるということです。

1-2.どんな人がリースバックをすべきか

企業でも個人でも活用が進むリースバックですが、個人で検討する場合、リースバックはどのような人が利用すべきなのでしょうか。大きく分けると以下の3つに当てはまる人が利用に向いています。

・ローンや借金で生活が苦しい人
・老後資金や教育資金を確保したい人
・住む環境を変えたくない人

(1)ローンや借金で生活が苦しい人

収入の減少などで住宅ローンの支払いが困難になった人やキャッシングやショッピングの多重債務で多額の利息を払っている人などは検討する価値があります。住宅ローンやカードローンを完済したうえで再度賃貸契約すれば生活の改善が期待できるでしょう。(ローンの残額によって結果には個人差があります)

(2)老後資金や教育資金を確保したい人

2019年6月に公表された金融審議会「市場ワーキング・グループ」報告書で老後資金2,000万円問題が話題になりました。しかし老後を考える年代であれば住宅ローンの返済も進んでいる可能性が高いです。そのため残債が少なく大幅な売却益が見込める場合は、リースバックを活用するのもよいでしょう。子どもや孫の教育資金を確保したい場合も同様です。

(3)住む環境を変えたくない人

長年住み慣れた環境や子どもの学区を変えたくない場合もおすすめです。リースバックによる売却を選択すれば生活資金を得たうえで同じ住居に住むことができます。賃貸に変わっても所有権を失うだけで住所は変わらず行政機関への届け出も必要ないため便利なシステムといえるでしょう。

個人ではなく企業のリースバックを検討している場合は、上記1~3の項目についてそれぞれ以下のように置き換えてみると分かりやすいかもしれません。
 
リースバックの利用が向いている人 リースバックの利用が向いている企業
ローンや借金で生活が苦しい人 財務内容を改善したい企業
老後資金や教育資金を確保したい人 成長のための投資資金を確保したい企業
住む環境を変えたくない人 営業地盤を変えたくない企業

2.リバースモーゲージとの違い

(画像=IM_photo/Shutterstock.com)
リースバックと似た仕組みにリバースモーゲージがあります。両者の大きな違いは売却の有無です。リースバックが売却して資金を得るのに対しリバースモーゲージは住宅を担保にして融資を受けます。原則としてオーナーの存命中は利息のみを払い、死去したのちに売却して元金を一括返済するシステムです。

融資額が不動産評価額の50%程度であることや利用できる年齢が金融機関によって55~60歳以上に限定されるなどリバースモーゲージは融資である分条件が厳しくなっています。また区分マンションは土地部分が共有であるため、融資を受けにくい点がデメリットです。

3.個人の住宅でリースバック活用のポイント

(画像=Image Supply/Shutterstock.com)
リースバックを成功させるためのポイントと確認すべきチェック項目は以下の2つです。

3-1.リースバックを成功させるには

リースバックを成功させるには、できる限り早くリースバック業者に相談することです。個人の住宅での活用を検討してるケースでは、特に住宅ローンの支払いが困難になった場合、残債によって対応方法が変わってきます。売却予想価格よりも残債務のほうが少なければリースバックは問題なく行われるでしょう。しかし残債のほうが多い場合は「任意整理」という形になるため、金融機関から競売入札決定までに必要な手続きを完了するように求められます。

つまりタイムリミットがあるわけです。万一手続きに間に合わずに競売が開始され、落札されれば物件を取り返すことは困難になります。

3-2.リースバック検討時に確認しておきたい3つのポイント

リースバックを検討するときには、以下の3つのポイントを確認することが大事です。

(1)住宅ローンと売却予想額との差をシミュレーションする

リースバックは売却価格よりも住宅ローンの残債が多いと基本的に審査が通りません。まず物件を売却して黒字になるかどうかをシミュレーションする必要があります。その時点で赤字になるようであれば任意売却に切り替えることも検討しなければなりません。

(2)賃貸契約した家賃を安定して払えるか

リースバックによって売却した資金で住宅ローンを完済する場合は、それほど手元には残らないケースもあります。そのため「賃貸契約を結んだあとにきちんと支払える収入があるか」について確認しましょう。年金も含め、リースバック業者が安心して貸せると判断してもらえる収入を提示することが大事です。

(3)共有名義なら同意が必要

持っている不動産が共有名義なら名義人全員の承認が必要です。もちろん共有名義人に無断で売却することはできませんが、相談なく勝手に話を進めただけでも後でトラブルになる可能性があります。そのためたとえ兄弟や親子など近い関係であっても事前に相談して方向性を決めるようにしましょう。

4.企業不動産におけるリースバックのメリットとデメリット

(画像=takasu/Shutterstock.com)
ここからは、企業不動産におけるリースバックについて見ていきます。はじめにメリットとデメリットについて確認していきましょう。

(1)リースバックのメリット

企業不動産におけるリースバックのメリットは、実務的な影響をあまり受けずに資金調達ができることです。例えば資金調達目的で自社ビルを売却した場合、移転先を検討するための時間的コストや移転コストがかかります。しかし「リースバック」を活用すれば同じオフィスビルを継続利用しつつ、自社ビルから賃貸ビルへと利用形態を変更することができるのです。

売却代金として一時的にまとまった資金が入り資金繰りが楽になるだけでなく資産のスリム化によってROAが改善し金融機関の融資審査で評価が上がるというメリットもあります。また「リースバック」の場合、毎月一定額のリース代金支払いのみとなるため、経費負担が標準化し経営の見通しが立てやすくなることもメリットです。

毎年変更される固定資産税や減価償却などに追われることもなくなり経理上の作業の軽減が期待できます。

(2)リースバックのデメリット

リースバックのデメリットは、リースバックの売却価格がローンの残債よりも高くないとリースバックを利用できないことです。ローンの残債のほうが多い場合は、抵当権の解除ができません。さらに売却後に再契約する場合、リース料(家賃)が周辺の家賃相場よりも高くなる可能性があります。買い戻すこともできますが、売却した金額よりも高くなる傾向があるため、リースバックはそれなりにデメリットがあることを考慮しなければなりません。

5.リースバックの対象になる企業不動産

(画像=urfin/Shutterstock.com)
リースバックの対象となる企業不動産は、オフィスビル(本社ビル含む)のほか、工場や研究開発施設、社宅、商業施設、物流施設などの幅広い不動産です。なかには底地の取引なども含まれます。リースバックした売主が長期利用する可能性が高いため、本社ビルや工場のような汎用性の低い物件も売却できることが特徴です。

一方で売主が退去した場合に備えて立地などテナント誘致のしやすさや他用途への転用可能性など不動産の汎用性についても当然評価されます。

6.企業不動産リースバックの実例

(画像=NeonLight/Shutterstock.com)
では、リースバックの実例として日本を代表する電機メーカーのソニーとシャープが実施したケースについてご紹介しましょう。

6-1.ソニーの事例

2013年にソニーが大崎の自社ビルと米国本社のビルをリースバックで売却。大崎駅前の「ソニーシティ大崎」の売却先は、日本最大のJ-REIT(不動産投資信託)日本ビルファンド投資法人と国内の機関投資家1社で売却額は1,111億円でした。一方、米国本社が入居するニューヨーク・マンハッタンのオフィスビルは約11億米ドルで売却しています。

大崎駅前の自社ビルは、売却のわずか2年前となる2011年に完成したばかりの地上25階建て地下2階の物件です。テレビ事業や研究開発部門など5,000人が入居していましたが、ソニーはこの取引によって関連費を差し引いた1,100億円を手にします。ソニーは売却当時、5年間のリースバック契約を結び継続利用することになりました。

大規模なリストラなどで経営再建を進める同社は、リースバックで得た売却益を手元資金として経営再建を進める方針だったとみられます。

6-2.シャープの事例

一方で台湾企業の傘下に入り経営再建に取り組んでいるシャープが、売却したはずの自社ビルを買い取ったことで注目を集めました。2015年、シャープは経営危機を受けて大阪の自社ビル2件をニトリとNTT都市開発へ売却。ところが翌2016年、NTT都市開発に売却し、リースバックでリース契約を結んでいたビルを売却時よりも1割程度高い約139億円で買い戻しました。

2017年には野村不動産と共同で、IoT(モノのインターネット)を活用したスマートタウンを開発しオフィスビルやマンションに建て替えると表明。オフィスビルにはシャープの技術部門などが入居し中核地点になるといいます。この背景には、「AIoT(AI×IoT)技術や音声対話技術などによって働く人々がより一層活躍できるスマートオフィス構想」を実現したいという狙いがあるようです。

7.まとめ

ここまでリースバックについて概要と企業の活用例について見てきました。個人においては、引き続き居住しながら売却益を得られ老後資金や教育資金を確保したりローンの返済に充てたりすることができることがメリットです。リースバックを成功させるには早めに相談することが大事で検討する際は注意点を事前にチェックすることも忘れてはなりません。

企業においては、自社ビルを所有していればリースバックによって「オフィス移転をしなくても不動産を活用して手元資金を得られる」という手段を選ぶことも可能です。ただ長期的に見ると自社ビルに比べてリース料が割高になる可能性があります。資金繰りに余裕がある企業は、資産を売却せずに継続利用したほうがメリットは大きいでしょう。

自社ビルの優位性に着目してこれから購入を考える場合は、「区分所有オフィス」のような少ない資金で自社ビルを実現することも選択肢の一つです。業績の変動によってはリースバックが控えていると考えれば経営者にとって心強いことではないでしょうか。

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