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2020.9.1

経営者が自社ビルで相続税・贈与税のタックスメリットを受ける方法

(画像=Jirsak/Shutterstock.com)
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企業経営が順調に進み経営者が年齢を重ねてくると頭に浮かぶのは「事業承継」の問題ではないでしょうか。後継者も決まり本業の承継には道筋がついていたとしても「税金」という、避けられない大きな壁があります。税金対策を誤るとせっかく承継した事業そのものさえ危うくなってしまいかねません。そのため最大限の注意を払うことが必要です。

本稿では、経営者が自社ビルの保有で相続税・贈与税のタックスメリットを受ける方法を紹介します。

1.相続税・贈与税とは

(画像=nishihama/stock.adobe.com)
はじめに、相続税・贈与税の仕組みと計算方法を確認しておきましょう。

1-1.相続税の仕組み・計算方法・税率

相続税は、財産を相続した人が支払う税金です。相続した財産から非課税のもの、債務や葬儀費用などを差し引いた残りの財産に対して税金が課税されます。相続税には、「3,000万円+600万円×相続人の数」で算出する基礎控除があります。

計算方法は相続額1億円で相続人が2人の場合、基礎控除額は4,200万円です。

3,000万円 + 600万円 × 2人 = 4,200万円

相続額1億円から基礎控除額4,200万円を差し引くと5,800万円となります。さらに、下表にある相続税の税率をあてはめると、1億円以下は税率が30%で、控除額が700万円です。したがって、1,040万円が相続税額となります。

5,800万円 × 0.3 - 700万円 = 1,040万円

1-2.贈与税の仕組み・計算方法・税率

贈与税は、財産を他の人に無償で与えたときに、受け取った人が支払う税金です。そのため、贈与は相手方が受け取ることを承諾した場合に成立します。生前贈与のメリットは、贈与された時点で財産の価値が確定することです。例えば、贈与された株式がその後大幅に値上がりしたとしても、相続時に追加課税されるということはありません。

贈与の基本は暦年贈与で、年間110万円の基礎控除があります。したがって年間110万円以下の贈与であれば贈与税はかかりません。ただし、年間110万円以下であっても、「毎年100万円ずつ贈るものとする」というような契約書を作ると「定期贈与」となり、課税される場合があるので注意が必要です。

計算方法は、贈与された額から基礎控除の110万円を引いた金額に、下表にある税率を掛け、控除額を引いて算出します。贈与額が1,000万円の場合は、以下のようになります。

(1,000万円-110万円)×0.3-90万円=177万円

1-3.相続税・贈与税の違い

相続税と贈与税にはいくつかの違いがあります。最大の違いは税率です。下表のように比べると贈与税のほうが税率はかなり高いことがわかります。
 
贈与税 相続税
課税対象額(※1) 税率 控除額 課税対象額(※2) 税率 控除額
200万円以下 10% 1,000万円以下 10%
400万円以下 15% 10万円 3,000万円以下 15% 50万円
600万円以下 20% 30万円 5,000万円以下 20% 200万円
1,000万円以下 30% 90万円 1億円以下 30% 700万円
1,500万円以下 40% 190万円 2億円以下 40% 1,700万円
3,000万円以下 45% 265万円 3億円以下 45% 2,700万円
4,500万円以下 50% 415万円 6億円以下 50% 4,200万円
4,500万円超 55% 640万円 6億円超 55% 7,200万円

※1 贈与税課税対象額は、基礎控除110万円を引いたあとの金額で、20歳以上の子ども・孫・曾孫に贈与した場合の特例税率。一般税率は上表と異なります。
※2 相続税の課税対象額は、基礎控除(3,000万円+600万円×相続人の数)を引いたあとの金額。

2つめの違いは税率とも関連しますが、課税方法の違いです。相続税は被相続人(故人)が亡くなったときに発生するので、一度にまとめて課税されます。そのため、基準になる金額が大きいのです。

これに対して贈与税は生前に何回かに小分けして贈与できるため、基準になる金額が小さく設定されています。例えば、同じ1,000万円でも相続税では10%の税率ですが、贈与税では30%も課税されます。しかし、贈与税では1,000万円を何年かに分けて贈与すれば、その都度基礎控除の110万円を引けるので、結果的に相続税よりも安くなる場合があるのです。

1-4.どちらが安いかの損益分岐点

では、相続税と贈与税のどちらが安くなるか、その分岐点はどこになるのでしょうか。そもそも相続税には3,600万円の基礎控除(相続人が1人の場合)があるので、それ以下の財産であれば、あえて贈与する必要もないことになります。

問題は、基礎控除を超える財産がある場合です。例えば、4,600万円の財産があれば1,000万円分はあらかじめ贈与しておいたほうがタックスメリットを受けられます。そこで1,000万円分についての損益分岐点を考える必要があります。

特例贈与財産用税額一覧(贈る相手が20歳以上の子ども・孫・曾孫の場合)
贈与額 基礎控除 税率 控除額 税額 税負担率
100万円 110万円 0% 0円 0%
200万円 10% 9万円 4.5%
300万円 10% 19万円 6.3%
400万円 15% 10万円 33.5万円 8.4%
500万円 15% 10万円 48.5万円 9.7%
600万円 20% 30万円 68万円 11.3%
700万円 20% 30万円 88万円 12.6%
800万円 30% 90万円 117万円 14.6%
900万円 30% 90万円 147万円 16.3%
1,000万円 30% 90万円 177万円 17.7%

相続税の最低税率は10%なので、それを下回る税負担で済む額を考えると、分岐点は500万円が目安になります。500万円を贈与した場合の税負担率(税額÷贈与額)は9.7%なので、相続税の最低税率を下回ります。以降は贈与額が増えるほど税負担率は高くなりますので、小分けにして贈与するなら500万円までに抑えるとよいでしょう。

本来であれば1,000万円を毎年100万円ずつ10回に分けて贈与すればすべて非課税になるのですが、上述したように「定期贈与」と見なされるおそれがあります。毎年同一金額を同一時期に贈ると実質的に1,000万円を贈与したものと見なされ、課税される可能性があるのです。

税務署から指摘されないためには、300万円、200万円、100万円、300万円、100万円というように金額や時期を分けて贈与する方法があります。このケースでの贈与税額は47万円なので、課税対象額1,000万円を相続した場合の税額100万円に比べておよそ半額に減らすことができます。

次に、事業承継について見てみましょう。

2.事業承継の3つの方法

(画像=naka/stock.adobe.com)
事業承継の方法には、大きく分けて次の3つの選択肢があります。

・親族に承継させる「親族内承継」
・従業員等の親族外の者へ承継させる「親族外承継」
・M&A

それぞれに詳しく見ていきましょう。

2-1.親族内承継

親族内承継は、現経営者の子ども・配偶者・子どもの配偶者・兄弟姉妹などの親族に対して事業を承継させる方法です。特に現経営者が創業者の場合、築き上げた会社を子どもに継がせたいと思うのは自然な気持ちといえるでしょう。中小企業では最も多く選択されている方法です。

2-2.親族外承継

親族外承継は、現経営者の親族外の者へ承継させる方法です。会社の役員が株式を買い受けて経営権を承継するMBO(マネジメント・バイアウト)、従業員が株式を買い受けて経営権を承継するEBO(エンプロイー・バイアウト)などいろいろな方法があります。株式を後継者に贈与や遺贈をすることも方法の一つです。

2-3.M&A

M&A(Merger&Acquisition)は企業の合併・買収のことです。株式譲渡・新株引受・株式交換、営業譲渡、合併、会社分割などのさまざまな方法で事業承継を行います。
 

>>【関連記事】経営者が事業承継を成功させるための3大テーマとは

3.株式を贈与・相続・遺贈すると相続税・贈与税がかかる

(画像=mapo/stock.adobe.com)
事業承継に立ちはだかる大きな壁は相続税や贈与税がかかることです。上記親族内承継と贈与や遺贈をするタイプの親族外承継には注意しておきましょう。上場企業の場合は、株式が公開されていて評価額が決まっているので大きな問題は起りにくい傾向です。しかし非上場株式会社の株式の場合、「評価額の決定=値付け」をしなくてはなりません。

例えば手弁当で始めた会社が成長し大きくなっていったなどの場合、株式の評価額が予想以上に跳ね上がっているケースがあるので注意が必要です。評価方法としては「類似業種比準価額方式」「純資産価額方式」「配当還元方式」などがあります。仮に株式総数の評価額が数億円を超過していて控除後の課税遺産総額が6億円超だとすると相続税は55%です。

相続税の納付方式は現金一括納付が原則のため、事業承継で数億円の現金を準備する必要があります。これから引き継いだ事業をスタートさせようと思っている後継者にとって、この税負担はあまりにも大きな足かせになるでしょう。

4.事業承継税制の特例措置

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重い税負担で廃業に追い込まれる企業が続出している現状を鑑み2018年度の税制改正により「事業承継税制の特例措置」ができました。この制度では、相続・贈与対象株式数の上限が撤廃され猶予割合を100%にすることで承継時の贈与税・相続税の現金負担がゼロとなります。ただし、特例の適用を受けるためには、以下の2つの条件を満たす必要があります。

・2018年4月1日から2023年3月31日までに、都道府県庁に「特例承継計画」を提出し、確認を受けていること。
・2018年1月1日から2027年12月31日までに、贈与・相続(遺贈を含む)により自社の株式等を取得すること。

4-1.一般措置と特例措置で変更になった点

一般措置と特例措置を比べ、変更になった点は以下の通りです。
  1. 一般措置に適用期限はありませんが、特例措置は2018年1月1日~2027年12月31日までの10年間に限定されます。
  2. 一般措置は計画を策定する必要はありませんが、特例措置は2023年3月31日までに「特例承継計画」を提出する必要があります。
  3. 適用される後継者の数は一般措置では1人だけでしたが、特例措置では最大3人まで適用されます。
  4. 納税を猶予される株式の数は、一般措置は総株式数の2/3までという制限がありましたが、特例措置では全株式が猶予されます。
  5. 納税を猶予される割合については、一般措置は贈与税が全額猶予されるものの、相続税は80%までしか猶予されませんでした。特例措置では両方全額猶予されるので、大きな優遇措置といえます。
  6. 雇用の確保は一般措置では承継後の5年間は平均して8割の雇用維持が必要でしたが、特例措置では弾力的な雇用が認められます。
  7. 相続時精算課税の適用につては、一般措置では「60歳以上から20歳以上の者への贈与。推定相続人(直系卑属)・孫への贈与」と規定されていますが、特例措置では「推定相続人(直系卑属)・孫への贈与」の部分は除かれることになりました。

4-2.特例措置で事業承継するための条件

特例措置を使って事業承継するためには、いくつかの条件が必要になります。事業承継前と承継後に行うべきことは以下の通りです。

・事業承継前に行うこと

まず、経営者としてのキャリアを確認しておきましょう。先代経営者の条件として、会社代表であったこと、議決権の過半数を保持した筆頭株主であったことが必要になります。また、贈与時には代表を辞任していなければなりません。

一方、後継者の条件としては、議決権の過半数を保持した筆頭株主であること、相続開始直前に役員であり、相続開始5カ月後に代表であること。贈与時に20歳以上、贈与直前に役員3年以上の代表であることをクリアしていなければなりません。

次に、会社の条件としては、下表の要件のうち、資本金または従業員数のどちらかを満たす必要があります。
 
業種 資本金 従業員数
製造その他業種(卸売・小売・サービス以外) 3億円以下 300人以下
ゴム製品製造業(自動車または航空機タイヤ・工業用ベルト以外) 900人以下
卸売 1億円以下 100人以下
小売 5,000万円以下 50人以下
サービス 100人以下
旅館 200人以下
ソフトウェア、情報処理サービス 3億円以下 300人以下

これらに加えて、「上場企業ではない、風俗営業会社ではないこと」「1人以上の従業員がいること」「資産保有型会社などに該当していないこと」という条件を満たす必要があります。

・事業承継後に行うこと

相続税・贈与税とも、猶予を継続するために事業承継後の5年間は必ず守らなければならない条件があります。

[相続税]
認定書交付後5年間は、認定のための条件を維持しているかを都道府県庁に報告する必要があります。同じく引き続き猶予特例を受ける旨を税務署にも報告します。猶予から5年経過後に、引き続き納税猶予の特例を希望する場合は、3年に1回、継続届出書を税務署に提出します。申請期間は、相続開始8カ月以内です。

[贈与税]
5年間守らなければならない条件は相続税と同じです。申請期間は贈与した翌年の1月15日までです。
 

>>【関連記事】新事業承継税制 上手に活用する5つのポイントをわかりやすく解説!

ここまで税負担を軽くする方法として特別措置について解説してきました。しかし、特別措置を受けられないケースや、該当したとしてもその後の企業戦略上利用しないほうがよいケースでは、どうすべきなのでしょうか。

5.特別措置を受けられない、または受けないでタックスメリットを受ける方法

(画像=minerva-studio/stock.adobe.com)
そもそも、株式の評価額が下がれば比例して課税総額も下がり、結果、タックスメリットを受けられます。相続税・贈与税の評価が下がるケースの一つは「非上場株式の評価額が下がる」ことです。ただし非上場株式の評価額が下がるケースはいくつかありますが、本業を毀損するようなやり方は本末転倒なので避けましょう。また国税当局が「租税回避行為」とみなすような方法も選択すべきではありません。

では、どのようにして非上場株式の評価額を下げればよいのでしょうか。1つの方法として、自社利用分と賃貸部分が併存したオフィスビルを購入すると、資産と利益の減少が可能になり株式の評価を(一時的に)下げられることです。このビルのうち土地部分については路線価によって評価されますので時価よりも低く評価されます。

また賃貸部分の貸家建付地評価減の適用を受けることで建物部分については固定資産税評価額によって評価を受けることが可能です。さらに同じく借家権割合による評価減を受けます。仮に内部留保(現金)が10億円ある企業AとBが存在したとしてAはそのまま、Bは10億円でオフィスビルを購入し、その不動産評価が5億円だったとしたらAの株式とBの株式では評価が変わります。

金融機関から融資を受けて自社ビルを購入すると借入金が負債となり純資産が小さくなるので株式の評価額が下がります。ビル購入後は、賃貸部分の賃料収入を得られるようになります。本業以外の収入源確保は承継後の経営を安定化させるのに、とても良い効果を発揮するでしょう。

6.「区分所有オフィス®」だからこそ対応できる

(画像=taka/stock.adobe.com)

オフィスビル購入時のイニシャルコストを下げる方法として「区分所有オフィス®」という手法があります。オフィス街の一等地にビルを購入するには多大なコストがかかることは避けられません。しかし「区分所有オフィス」であれば東京都心5区(千代田区、中央区、港区、新宿区、渋谷区)のオフィスビルを1億円程度から保有することが可能です (小規模なもので1億円以上、中心価格帯で2億から3億円)。

「区分所有オフィス」という中規模オフィスビルを1フロアごと、あるいはスペースごとに分譲するスキームだからこそ実現できる価格です。「区分所有オフィス」は都心の一等地にあるので空室リスクなどの不動産経営のリスクを下げることもできます。「自社使用分+賃貸分の必要なスペースだけ購入する」というような柔軟な買い方ができるのも「区分所有オフィス」の強みです。

しかし不動産の購入、保有には税金の負担が伴います。相続、贈与や事業承継での評価額が下がることと同時に発生する税金について、正しく理解することが必須になりますので、税理士や専門家へ相談することも重要になります。

きちんと専門家に相談した上で、評価額の減少幅と負担する税金を把握し、事業承継を見すえたCRE戦略の一環として一度「区分所有オフィス」購入を選択肢に入れてみてはいかがでしょうか。

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※「区分所有オフィス®」は株式会社ボルテックスの登録商標です

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